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2. 加工制約と設計時の注意点

EMARFでの加工の際には、加工上の制約から、設計時にいくつか注意が必要な点があります。この章ではその中でも特に注意が必要な4点について、それぞれ解説をしています。大きく①加工方法②加工範囲③加工精度④フィレットの4つとなります。

2-1 | 対応している加工方法

EMARFで扱う機械であるShopBotには本来多彩な加工方法がありますが、EMARFのシステム上で利用できる加工方法は以下となります。
  • 輪郭(切り抜き)加工
  • ポケット(掘り込み)加工
  • 溝彫り加工
  • 穴あけ加工(直径の制限あり)
一方、下記のような加工は現在システム上では対応しておりません(場合によっては個別に対応させて頂くことも可能です)。
  • 3D加工
  • 両面加工
  • 斜め加工

輪郭加工:○

輪郭加工は部材を閉じた線によって外側を切り出す加工のことです。閉じた線というのはソフトの操作上間違えやすいので、モデリングの際は特に気を付けてください。
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ポケット加工:○ 

閉じた線を使って、ある範囲に削る深さを指定し削り取ります(掘り込み加工ともいう)
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溝彫り加工:○

線の上をなぞるように使う刃物の太さで掘りこみ加工します。
Rhinoceros、Illustratorではプラグインの機能を用いることで1本の線で表現することが可能です。なお、刃物の幅は板厚24mm以下で6.35mm、板厚30mm以上で12.7mmと自動で決まります。
DXFアップロードの場合は単線ではなく、掘り込みの線幅を自分で作る必要があります(線の幅は自由に変更可能)。
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穴あけ加工

使う刃物(=板厚)によって最小の穴のサイズが決まります。
  • 刃物の直径が6.35mm(=板厚24mm以下)の場合:直径8mm以上の穴あけが可能
  • 刃物の直径が12.7mm(=板厚30mm以上)の場合:直径15mm以上の穴あけが可能
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3D加工:✖ 

曲面などの3D形状を再現して加工します。
※システム上対応していませんが、加工可能な場合もありますので、一度問合せよりご連絡ください
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両面加工:✖ 

表面・裏面の両面から加工を行います。
※システム上対応していませんが、加工可能な場合もありますので、一度問合せよりご連絡ください
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斜め加工:✖

EMARFでは板に対して傾斜をつけた加工は現在システム上対応していません。

2-2 | 加工可能な範囲

扱う刃物(エンドミル)

高速で回転させながら移動することで部材を加工します。穴を開けたい場合は、刃物の直径より少し大きな穴であれば加工することができます。 また刃物の直径に合わせてフィレットの大きさが変わります。(フィレットについて
切り抜きの際には、刃物の直径分の通り道ができます。
現在、EMARFで対応している刃物の直径は以下になります。 板の厚みによって自動で決まるため、指定することはできません。
刃物の直径
対応厚さ
6.35mm (1/4インチ)
24mm以下
12.7mm(1/2インチ)
30mm以上

板の大きさ

36板(サブロクバン)と48板(シハチバン)の2種類があります。日本の尺貫法という「尺」が単位だったころ、1尺という単位で約303mmだったことから、3尺×6尺でサブロク板、4尺×8尺でシハチ板といわれています。
36板は910 mm ×1820 mm の大きさで、48板は1230mm × 2430mmです 。発注する際に、このサイズを意識してうまく部材を収められると効率が良いです。
板サイズは上記の通りになりますが、最大で 1820mm x 910mm のモデルを切削できるわけではありません。板材をShopbotにビスで固定するための余白を考慮すると、実際に切削できるモデルの最大サイズは 1820mm x 910mm よりも小さくなります。詳しくは下記を参考ください。
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板の4辺の余白とモデル間の余白による制限

EMARFでは板材四辺の縁の余白を5mmに設定しています。
また、部材の周囲に15mmの余白を設定しています。
板材の縁の余白とモデル間の余白を考慮するとEMARFで切削可能なモデルの最大サイズは次のようになります。
幅: 1820 - (5*2 + 15*2) 奥行き: 910 - (5*2 + 15*2)
ミルサイズは板厚によって異なります。板厚が24mm以下のときミルサイズは6.35mmになり、板厚が30mm以上のときミルサイズは12.7mmになります。
よって、板厚が24mm以下のとき切削可能な一つのモデルの平面サイズは最大約1780mm × 870mmとなります。 板厚が30mm以上の場合は一つのモデルが約1760 × 850mmに収まるように設計する必要があります。
部材の最小サイズについては現在制限は設けられていません。
EMARFウェブサイトへ送信後、モデルのバウンディングボックスの長手方向が板材の長手方向と並行になるようにモデルが回転されます。そのため、EMARFウェブサイトへデータを送信する前に部材を最も長い幅(または高さ)となるようにあらかじめ回転をさせる、などして部材のサイズ内におさまるか確認していただく必要があります。
例:Illustratorの場合
斜めに配置していると一見材料に収まっているように見えますが、長手方向に沿うように回転させると、以下の場合は長さが1763 mmに収まっていないため送信できません。
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端材の出ない加工

極端に歩留まりの良い加工はできません。材料を機械に固定する関係で、固定シロが必要なため、端材が全くない加工はできません。 部材間に十分な距離をとる必要があります。とりつける様子はこちらでも紹介していますリンク
例えば、36板を指定したとしたら、最大で材料のサイズとほぼ変わらない大きさで切り出すのは不可能で、板厚が24mm以下のとき切削可能な一つのモデルの平面サイズは最大約1757 × 847mmとなります。 板厚が30mm以上の場合は一つのモデルが約1744 × 834mmより小さいものしか切削できません。
複数部材を切る場合は EMARFでは、部材を自動で配置しくれます。もし、自動で割付の収まりが悪い場合は、制限を考慮した範囲で手動配置することもできます。リンク
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2-3 | 加工精度について

EMARFでは、下記のように加工の精度の基準を定めています。誤差の要因は様々なものがあるため、精度がシビアな設計をされる際には、あらかじめクリアランスを余分にとる、もしくは組立の際に手元でやすりなどを使って微調整することなどをご検討ください。
・設計データから±1mm程度の加工誤差が生じることがあります。
・材料によっては、±0.5mm程度厚さに誤差がある場合があります。
・合板のポケット加工の場合、積層の位置によって設計より1-2mm深くなる場合があります。
・湿気による木材の膨れ、反りが生じる可能性があります。
・乾燥による収縮、反りが起きることがあります。
・木材には個体差があり、データのレイアウトや形状によって節、われ、ヒビが表面に出る可能性があります。
・同じ材種でも、加工拠点によって色味・節などの個体差がある場合があります。
・配送中の扱い方によっては、表面に軽微な傷がつく可能性があります。

2-4 | フィレットについて

内側の角は必ず丸くなる

例えば絵画を飾るために額縁をEMARFで切り出すとしましょう。
絵画をはめ込むためにこのような四角形のデータを作ったとします。
するとデータは角が直角でも、実際に切り出すと通常はこのように角が丸くなってしまいます。
絵画の角がもとから丸くなっているものならばうまくはまるはずですが、これでは角がぶつかってはまりません。加工の種類でいくつかご紹介しましたが切り出す線は内側の角が基本的にはまるくなり (Rがつくといい)ます。
機械では刃物の軌道を上から見ると回転しているため、どうしてもそうなってしまうという特徴だということは念頭においてください。
とはいえ、例えば木組みなどで部材を直角に組み合わせたい場合があるとします。同様にRのついた部分が互いにぶつかってしまうので、一番奥まではまりきらないような事態がおこってしまいます。

その時にあると便利なのがフィレットです。

直角を出すためのフィレット

フィレットを使い刃物を奥までわざと少し切り込むことで、直角がぴったりかみ合うようにつくることができます。切り出すときの材料の厚みによって刃物の直径は違うので注意してください。フィレットの代表的な形状は「T ボーンフィレット」や「ドックボーンフィレット」です。
フィレットを見えないよう隠して使いたい場合、板の差し込む方向に沿うようにフィレットをかけると、くみ上げた際にフィレットの穴を隠すことができます。

フィレット自動生成機能

フィレットはマニュアルで作図することもできますが、EMARFのプラグインが対応しているCADであれば、プラグインの機能を使うことで選択した角に一斉に任意の形状のフィレットをつけることもできます。詳細については、各プラグインのチュートリアル動画をご参考ください。
フィレットの種類と入力数値
また、フィレットはWebサイト上でも作成することができます(プラグインアップロード・DXFファイルアップロード共通)。
Webサイト上でのフィレット生成画面